中古車のチェックポイント|一級整備士が必ず見る3箇所

中古車のチェックポイント|一級整備士が必ず見る3箇所 中古車

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中古車を買う人の多くが、エンジンをかけない

整備と販売の両方に関わってきて、ずっと不思議に思っていることがあります。

中古車を見に来たお客さんの多くが、エンジンをかけないまま車を決めてしまうのです。

ボディの傷は熱心に探します。シートの汚れも、内装のニオイも気にします。それ自体は間違っていません。でも、車の心臓であるエンジンの音を一度も聞かず、タイヤの状態も見ないまま、「きれいだから」で判断してしまう。

数十万円、車によっては数百万円の買い物です。そこだけは、しっかり確認してほしい。

私は国家一級整備士として11年、国産から輸入車、新車から旧車まで、あらゆる車種を修理してきました。この記事では、私自身が中古車を見るときに実際にやっている順番を、そのままお伝えします。

外装と内装のチェックは、正直、誰でもやります。だからこの記事では書きません。その先の話をします。

整備士が中古車で見る順番

1. まずエンジンをかけ、音を聞く

これが最初です。例外はありません。

エンジンは車の心臓です。そして、エンジンまわりの不調は、ほぼすべてが高額修理に直結します。外装の小傷は数万円で直りますが、エンジンの異音の正体によっては、車両価格に匹敵する修理費になることすらあります。

見た目がどれだけきれいでも、エンジンから変な音がしている車は、その時点で候補から外して構いません。逆に言えば、エンジンをかけるだけで、最悪の地雷はかなりの確率で避けられます

かけてすぐの音、しばらくアイドリングさせた後の音、両方を聞いてください。「なんとなく変だ」と感じたら、その直感は大事にしてください。

2. エアコンが効いているか(特に夏場)

意外と見落とされますが、エアコンは修理費が高い部品です。

私の感覚での修理費の目安はこうです。

車種エアコン修理の目安
軽自動車6万円以上
乗用車10万円以上

「安く済んで6万円」です。しかもこれは、車両価格にそのまま上乗せされる出費になります。

だから中古車を見るときは、季節に関係なく必ずエアコンを入れて確認してください。

「冬に買うからエアコンは関係ない」と思う方が多いのですが、これは違います。エアコンが効かない車は、夏に苦労するのはもちろん、冬も雨の日に窓の結露が取れません。 エアコンは冷やすだけの装置ではなく、空気の水分を取る装置でもあるからです。曇った窓が晴れないまま運転するのは、単純に危険です。

冬に買って、夏になって効かないと気づく。あるいは最初の雨の日に窓が曇って初めて気づく。どちらもつらいパターンです。A/Cのチェックは欠かせません。

3. タイヤの残量と状態

タイヤも、見落とすと痛い出費になります。

タイヤの種類4本交換の目安
軽自動車・一般的なタイヤ8万円前後
海外製の安価なタイヤ6万円以内

残量が少ない、ひび割れている、製造年が古い——こうした場合、納車後すぐに交換費用が発生します

チェックすべきは、溝の残量、ひび割れの有無、そしてタイヤの製造年です。製造年はタイヤ側面に刻印されていますが、見方が分からなければ、遠慮なく店員さんに聞いてください。 中古車を買う客がタイヤの年式を尋ねるのは、まったく不自然なことではありません。

そして、ひび割れについて一つ基準をお伝えします。製造から5年以内であれば、軽いひび割れは許容範囲です。ゴムである以上、多少の経年変化は避けられません。「ひび割れ=即アウト」ではないので、そこは落ち着いて判断してください。

なお、ここはネガティブな話だけではありません。タイヤの状態が悪いことは、そのまま値下げ交渉の材料になります。「タイヤ、もう替え時ですよね」と伝えて価格を調整してもらえたら、それはラッキーです。

素人が誤解しがちな2つのこと

現場にいると、「それは誤解です」と言いたくなる場面がよくあります。代表的なものを2つ挙げます。

走行距離10万kmは、もう終わりではない

「10万kmを超えた車は寿命」——これは、今の車には当てはまりません

最近の車は、10万kmを超えていても驚くほど元気です。昔の車と比べると、まだまだ十分に乗れるものが多い。走行距離だけを見て候補から外すのは、正直もったいないと思います。

ただし、条件があります。おおむね「ここ13年以内くらいの車」に限った話です。それより古い年式になると、話は変わってきます。年式と走行距離は、セットで見てください。

事故車は、一律でNGなのか

「事故車は絶対に買わない」という方は非常に多いです。その気持ちはよく分かります。

ただ、整備士の目で見ると、もう少し細かい話になります。たとえば4WDではない車が追突された場合。後ろからぶつけられた事故で、修理がしっかり行われているのであれば、エンジンなどの重要部分に不具合が出ていないことも多いのです。事故車というだけで一律に切り捨てると、悪くない車を見逃すこともあります。

ただし、はっきり言っておきます。それでも事故車はあまり買わないほうがいいのは確実です。

事故車には「修理がしっかりされているか」という、素人には判断が難しい変数が必ず入ります。上の話は「絶対に避けなければいけないわけではない」という程度の意味であって、「積極的に狙っていい」という意味ではありません。迷ったら、避けてください。

【現場の実感】故障が少ないメーカーの傾向

ここからは、統計データではなく、私が11年間、実際に直してきた中での個人的な実感です。その前提で読んでください。

国産車では、故障の少なさはトヨタがダントツだと感じています。次いでホンダ。日産とマツダは、比較的故障が多い印象があります。

軽自動車は、全体的に故障が多いと感じます。理由は車の出来というより、使われ方です。軽自動車は無理な使い方をされていることが多く、それが車体に効いてきます。

輸入車は、正直なところ、どの車種も故障しやすいというのが実感です。理由ははっきりしていて、日本の高温多湿と四季の変化に適応しきれていないからです。本国の気候を前提に作られた車が、日本の夏と冬を何年も繰り返し受けると、どうしても無理が出ます。

もちろん、メーカーごとに「この車種は壊れにくい」というものは存在します。そこは車種単位の話になるので、今後の記事で少しずつ書いていきます。

買う前チェックリスト(素人でもできる)

専門知識がなくても、これだけはやってください。

  • エンジンをかける(これを飛ばさない)
  • かけた直後と、しばらく後の音を聞く。違和感があれば見送る
  • 季節に関係なくエアコン(A/C)を入れて確認。冬でも必須(雨天時の結露対策)
  • タイヤの溝の残量を見る
  • タイヤの製造年を確認。分からなければ店員さんに聞く
  • タイヤのひび割れを見る。製造から5年以内なら軽いひび割れは許容範囲
  • タイヤが替え時なら、値下げ交渉の材料にする
  • 走行距離だけで判断しない。年式とセットで見る(目安:13年以内)
  • 事故車は、迷ったら避ける
  • 保証の範囲と期間を必ず確認する

買う前に、今の車がいくらになるか知っておく

中古車を買うとき、多くの方は今乗っている車を手放します。そしてここで、損をしている人が本当に多い。

販売店の下取りは、そのお店1社が決めた金額です。比較する基準がないまま「こんなものか」と受け入れてしまうと、本来つくはずだった差額をそのまま失います。 車は買う側の交渉ばかり意識されますが、手放す側の金額のほうが、動く幅は大きいことが多いのです。

整備士としてはっきり言えるのは、複数の買取業者に競わせるのが、一番高く売れるということです。ただ、一般的な一括査定は複数社から電話が殺到するのが難点。それが煩わしければ、オークション形式を選ぶ手があります。

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それでも、素人には見抜けないものがある

正直にお伝えします。上のチェックをすべてやっても、素人が見抜けない不具合は残ります。内部の摩耗の進行度、修理歴の質、これから壊れそうな箇所の予兆——こういったものは、実際に分解した経験がないと判断できません。

だからこそ、保証の内容の確認は必須です。 どこまでが保証範囲で、期間はどれだけあるのか。ここは遠慮せず、納得いくまで聞いてください。見抜けない部分をカバーしてくれるのが保証です。

もう一つ、購入前に第三者のプロに見てもらうという方法もあります。確実性で言えばこれが一番です。

ただ、業界の中にいる立場から、正直な注意点をお伝えします。 「知り合いの整備士に見てもらいます」と店員さんに伝えると、敬遠されて、良い対応をしてもらえなくなる可能性があります。 売る側からすると、粗探しをされる前提の客に見えてしまうからです。

だから、やるなら伝え方に気をつけてください。あるいは、まずは自分でこの記事のチェックをやってみる。それだけでも、大きな失敗はかなり避けられます。

それでも、エンジンをかけて音を聞き、エアコンを入れ、タイヤを見る。この3つをやるだけで、避けられる失敗は確実にあります。高い買い物です。やらない理由がありません。

よくある質問

Q. 走行距離が少ない車のほうが良い車ですか?

一概には言えません。走行距離が少なくても、年式が古ければゴム部品などは劣化します。逆に10万kmを超えていても、13年以内くらいの車であれば十分元気なものが多いです。走行距離だけで判断せず、年式とセットで見てください。

Q. エンジンの音の「違和感」は、素人でも分かりますか?

明らかな異音であれば分かります。カラカラ、ガラガラ、キーキーといった音や、不規則な音が出ていれば要注意です。「なんとなく変だ」という直感も、意外と当たります。判断に迷うなら、その車は見送るのが安全です。

Q. 冬に中古車を買うなら、エアコンのチェックは不要ですか?

必要です。ここは絶対に省かないでください。 エアコンは冷やすだけの装置ではなく、空気の水分を取る装置でもあります。効かない車は、夏に苦労するのはもちろん、冬も雨の日に窓の結露が取れません。曇った窓のまま運転することになり、危険です。季節に関係なくA/Cを入れて確認してください。

Q. タイヤにひび割れがあったら、その車はやめるべきですか?

ひび割れ=即アウトではありません。製造から5年以内であれば、軽いひび割れは許容範囲です。ゴムなので多少の経年変化は避けられません。まず製造年を確認してください(分からなければ店員さんに聞けば教えてもらえます)。

Q. タイヤが古いと、値下げしてもらえますか?

交渉の材料にはなります。タイヤ交換は軽自動車でも6〜8万円程度かかる出費なので、替え時であることを伝えて価格を調整してもらえないか聞いてみる価値はあります。

Q. 購入前に、知り合いの整備士に見てもらうべきですか?

確実性で言えば最も有効です。ただし業界の実情をお伝えすると、「整備士に見てもらう」と店員さんに伝えると敬遠され、良い対応をしてもらえなくなる可能性があります。粗探し前提の客に見えてしまうためです。やるなら伝え方に気をつけるか、まずはご自身でこの記事のチェックを試してみてください。

Q. 輸入車は買わないほうがいいですか?

私の実感では、輸入車は日本の気候との相性で故障が出やすい傾向があります。ただし「絶対に買うな」という意味ではありません。維持費と故障のリスクを織り込んだうえで、それでも乗りたい車であれば選択肢になります。


この記事について

この記事は、国家一級整備士(整備歴11年)として、国産・輸入、新車から旧車まで幅広い車種の整備・修理に携わってきた経験にもとづいて執筆しています。

修理費用の金額は、筆者の現場での感覚にもとづく目安であり、車種・年式・状態・地域・依頼先によって変動します。実際の費用は必ず整備工場等でお見積もりをご確認ください。また、メーカー別の故障傾向は統計データではなく、筆者個人の整備経験からの実感です。

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